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2021年12月、オリバー・ワイマンでは、「資産運用のトレンド 2022年」を公表致しました。

当初は、2021年は、パンデミックの収束によって、我々を取り巻く環境が正常化するとの期待感もありましたが、現実には、様々な課題が未だにそのままの形で残っております。マクロ経済では大きな「既知の未知(known unknown)」が存在し、何か大きなことが、いつ起きるとも知れず、その結果がどうなるかもわからず、私たちは引き続き警戒心を解くことができない環境にあります。

本レポートでは、2022年の資産運用に関する10の重要な視点を述べております。

1. 金融・財政政策に支えられた良好な資産運用環境の終焉

2. 伝統的資産運用からオルタナティブ資産運用へのシフトの加速

3. トークン化や分散側台帳技術による投資の小口化

4. 安定的な長期資本獲得競争と生命保険への着目

5. ESG投資における規制の加熱(グリーンウォッシュの排除)

6. ESG投資における具体的なインパクトの創出

7. 資産運用会社のバーチャル化

8. 資産運用会社が主導する顧客接点強化

9. 中国オンショア市場の台頭

10. M&Aを通じた資産運用業界の再編・再構築

まず、グローバル金融危機の収束以来続いてきた金融・財政政策が転換点を迎えつつある中、これまでの良好な資産運用環境が次のステージに入る可能性が高まっています。そうした中では、これまで伝統的資産運用で享受できたアルファの獲得機会が狭まり、オルタナティブ資産等へのシフトが進み、資産運用業界の競争環境が変化する可能性があります。

また、トークン化(ブロックチェーンを用いた電子的な証票発行)を含む分散型台帳技術の台頭は、従来は大手機関投資家が主役であった資産運用業界のあり方を変え、小口投資家の存在感が高まってくる可能性もあります。デジタル技術を活用して、資産運用実務に必要な各機能を外部委託によって実装する身軽なバーチャル資産運用会社の登場や、資産運用会社自身が顧客接点を強化し、これまでのディストリビューターとの力関係に変化を及ぼす可能性も指摘できます。

ESGに対応する投資の促進は、引き続き資産運用業界にとって重要な取組課題となりますが、初期的な「ESG投資」という単なるラベル貼りの段階からは脱却し、いわゆるグリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)ではない、真に社会の脱炭素化に貢献する投資のあり方が問われるようになるものと考えられます。

また、資産運用会社にとっては、新たな市場として、生命保険に係る年金や終身契約のブロック取引を通じた資金調達の機会、中国のオンショア市場での機会などが広がりつつあります。

これらの変化には、パンデミックを機会に偶然にも推し進められたものも含まれます。気候変動リスクへの世界的な意識の高まりは、資産運用業界のあり方を変えました。新たなデジタル技術は、広く金融サービスの変化を根本から変えつつあります。こうした先行き不透明な環境が継続する中で、資産運用会社は、従来の発想とは異なる機能や能力の獲得に向けて、M&Aを通じた業界再編に向かうことも考えられます。

私たちの視点が、資産運用ビジネスに携わる皆様にとって、今後の変革推進の一助となれば幸いです。

オリバー・ワイマン

関岡泰之