CEO アジェンダ 2026

世界の時価総額の 10% を占める企業の CEOは次に何を見据えているのか
Ana Kreacic, John Romeo, Arran Yentob, Jose Lopez, Maggie Lavoie, Lulu Smith
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地政学や人工知能から成長、レジリエンスに至るまで、今日のビジネス環境が突きつける複雑な課題と機会に、世界のトップ CEOはどのように対峙しているのでしょうか。また、その過程で彼らは互いから何を学べるのでしょうか。

これらの問いに答えるべく、オリバー・ワイマン・フォーラムとニューヨーク証券取引所は、世界のCEO415 名から詳細な調査回答を収集しました。本調査は同種の年次調査としては最大規模であり、今回で三度目の実施となります。本調査の対象となる上場・非上場企業は広範なセクターにわたっており、対象とした上場企業だけでも世界の時価総額の約 10% を占めています。

図表 1: 数字で見るCEO の優先事項
Infographic of CEO priorities with survey percentages on AI, talent, M&A, cost management, governance, and succession planning.
Notes: 1: 巨大企業 = 年間売上高 100 億ドル超、時価総額 300 億〜1 兆ドルの企業 (N=59)、 2: AI 導入リーダー企業 = 少なくとも 2 つのユースケースで AI ツールまたはエージェントを拡大展開している企業 、 3: Spencer Stuart、オリバー・ワイマン・フォーラム分析。 別途記載のない限り、将来の見通しに関する数値はすべて今後 1〜2 年に関するものです 。
ソース: オリバー・ワイマン・フォーラム × ニューヨーク証券取引所 CEO 調査 2025 年および 2026 年

回答の内容は様々ですが、2026 年において、CEOに共通する確信が浮かび上がっています。それは、前例のない破壊的変化の波を、自らが飲み込まれる前に活かすべき時だという認識です。そのためには、従来とは異なる思考が求められます。今日のリーダーたちにはもはや、優先事項を一つひとつ順番に解決する余裕はありません。代わりに、AI や M&A から人材、ガバナンスに至るまで、複数の分野で同時並行的に実行する必要があるため、その過程においてトレードオフや厳しい選択に向き合わなければなりません。

私たちはこのデータを整理し、今日の CEO アジェンダを形成する 6 つの重要な知見を導き出しました。

  1. CEOは破壊的変化を攻勢に出る機会と捉えている:65% の CEO が、現在の不安定な状況を、嵐のように単にやり過ごすだけでなく、競合他社に対して優勢に立つチャンスと見ています。
  2. 依然として成長が最優先事項である一方、ビジネスモデルは変化しつつある:3 分の 2 の         CEO が、増収や内部成長投資などの成長手段を最優先目標として選択する一方、58% がコスト管理を上位 3 項目に挙げています。自己資金による成長が主流の戦略となっており、コスト削減と生産性向上は、破壊的変化への単なる防御的な対応ではなく、それを活用するための資金調達の原動力となっています。
  3. M&A はほぼすべての CEO の ToDo リストに入っているが、攻勢に出ている CEO は規模とスピードの獲得を目的として買収を実行している:94% の CEO が今後 1〜2 年以内に M&A を計画しており、業界再編を進めている CEO は 65% と昨年より 6 ポイント上昇しています。しかし M&A はますます、構築に時間がかかり過ぎるケイパビリティを買収で獲得するという方向に変化しており、42% が新たな能力と知的資本の獲得を計画しています。この割合は、最大規模の企業では 54%に上昇し、技術革新が最も急速に進んでいる分野では 55% を超えています。
  4. AI デバイド(AIを使いこなせる人とそうでない人の格差・分断)は拡大しており、多くの企業が依然として試験運用や計画段階から抜け出せないでいる一方で、先行企業は投資利益率     (ROI) の格差を広げている:3 分の 2 の企業は、依然として計画または試験運用段階にあり、 53% が ROI を評価するには時期尚早だと回答しています。この割合は昨年の 41% から上昇しています。一方で、AI を2 つ以上のユースケースに拡大展開している企業は、コスト削減と増収の両面で約 2 倍の ROI を報告しています。企業規模も重要な要素です。巨大企業のうち AI によるコスト削減率 10% 超を達成している割合は、中規模企業に比べて約 5 倍に達しています。
  5. AI は従来の人材ピラミッドを中間層が厚いダイヤモンド型に変える圧力となっている:ジュニア職を削減している企業の割合がわずか 1 年で 17% から 43% に急増した一方、33% の企業が中間層の職種への労働力の移行を進めています。ピラミッドが変形する中でも、45% が従業員数を横ばいに維持し、29% が 5% 超の人員削減を行っています。
  6. 時間軸は短縮されつつあり、取締役会による統治はより厳格化している:CEO が計画に費やす時間のうち、1 年未満の短期的な計画に充てる割合は、 2025 年の 43% から現在は 50% まで増加しています。また、96% の CEO が少なくとも 1 つの分野で取締役会の関与が増加したと報告しています。

こうした分野の多くにおいて、積極的に同時進行で動いている企業は、一歩リードし始めています。これは大きな乖離の始まりとなる可能性があります。

企業規模は重要な要素の一つです。例えば、今回の調査対象となった中小企業は、大手競合企業からの統合圧力に直面しており、私たちが追跡する大企業や巨大企業よりも高い割合で、大規模かつ変革的な M&A 案件を追求しています。中規模企業は、昨年 AI への積極的な投資意欲を示していたにもかかわらず、AI の拡大展開においては、小規模企業と大企業の双方に遅れをとっています。また、一部のユースケースでは、規模が大きくなると AI の利点がさらに高まります。大企業および巨大企業の 45% が、業務効率化と顧客サービスにおいて AI を大規模に展開しており、この割合は小規模企業の約 2 倍です。

地域による差異も見られます。アジア太平洋地域では 47% の企業が AI 導入のリーダーに該当し、欧州の 30% を大きく上回っています。北米はその中間で 37% です。一方で、今回の調査でも最も成長志向が強い地域は依然として北米でした。欧州の CEO は、人員削減を行う可能性が最も高く (38% が 5% 超の人員削減を計画)、北米の同業者よりも積極的に地理的拡大を目的とした M&A を追求しています (北米の 40% に対し、欧州では 54%)。その中には、これを変革し成長に軸足を移すための決定的な瞬間と捉えている CEO もいます。

図表 2: CEO たちの言葉を借りれば: AI と M&A に倍賭けして変化と成長を推進
CEO たちが 2026 年に向けた最大の賭けや変化を説明する際に最も頻繁に使用した言葉
Keyword chart grouping CEO priorities into AI, talent, growth/M&A, transformation, and navigating geopolitical uncertainty.
Notes: 質問: 「2026 年に CEO として行う最大の賭けまたは変化は何ですか(任意の短い回答、5〜10 語)」、N=308 (自由記述で回答した CEO の数)
ソース: オリバー・ワイマン・フォーラム × ニューヨーク証券取引所 CEO 調査 2026 年、オリバー・ワイマン・フォーラムによる分析

私たちは、CEO に対して単なる感情論ではなく、同業他社の実践的なビジネス知見を提供することを目指して、 2024 年にこのプロジェクトを立ち上げました。それ以来、あらゆるものがきわめて高速で動いています。AI はイノベーション サイクルを短縮し、競合他社は M&A を進め、地政学的状況は急速に変化しています。取締役会は戦略、リスク、リーダーシップに関する意思決定への関与を強めており、CEO に対して正しい問いを投げかけるだけでなく、以下のような問いに答えるようプレッシャーを強めています:どのように成長するのか、またどのように優位なポジションを確保するのか?その取り組みの資金をどのように調達するのか?資本をどのように配分すべきか?機会を捉えるためのスピードと AI の能力を買収すべきかあるいは自社で構築すべきか?AI を活用した、あるいは AI を最優先とする新たな競合企業の波にどのように対応すべきか?AIに伴う新たなリスクを負うことは堅実な判断か、それとも危険か?時間軸の圧縮、ガバナンスの厳格化、労働力構造の変化という現実を踏まえ、事業運営モデルをどのように再設計すべきか?

CEO のアプローチは、企業の規模、業種、地域によって異なりますが、これらのリーダーたちは、近年まれに見る難易度の戦略的難問に取り組むという共通の目標を見出しています。2026 年に優位に立てるか否かは、破壊的変化とスピードを、脆弱性を生まずにパフォーマンスへと転換できるかにかかっています。このバランスを正しく取れる CEO は、ただ変化についていくだけでなく、未来を形作ることになるでしょう。詳細については、下記の英語のレポート全文をご覧ください。

著者
  • Ana Kreacic,
  • John Romeo,
  • Arran Yentob,
  • Jose Lopez,
  • Maggie Lavoie,
  • Lulu Smith