今こそ日本のラグジュアリーに投資する好機

商業・文化両面における投資機会の開拓
Home  // . //  //  今こそ日本のラグジュアリーに投資する好機

日本が今、脚光を浴びていることに否定の余地はない。SNSを開けば、東京ストリートスタイルの独創性、京都の茶室の静謐、丁寧に畳まれたデニムジャケットが醸し出す満足感など、その証拠はいたるところにあふれている。

訪日外国人観光客数は2025年9月(執筆時の最新月次データ)に320万人を超え、前年比14%増となった。観光庁によると2025年7~9月の外国人観光客の消費額は2兆1300億円と、2024年同期比で11%増加した。先立つ2024年の実績も目覚ましく、訪日消費額は8兆1400億円に達し、2023年比53%、2019年比69%の増加となっている。これは世界中の人々から見て、日本がさまざまな魅力的な商品の産地として独自の地位を確立していることを反映している。投資家はこの機を捉え、ラグジュアリー経済が国内外で成長の兆しを見せている今こそ、日本のラグジュアリー企業に真剣に目を向けるべきだろう。

現代のラグジュアリーは、きらびやかなブティックや、フランスやイタリアの高級デザイナーズブランドという枠をはるかに超えて進化している。翌日配送のファストファッションや使い捨て市場が急成長する一方、ラグジュアリーは精密な技術と長年の熟練によって作り上げられた品々を指すようになっている。値段だけでなく、希少性とこだわりぬかれた職人技によって定義されるのだ。 日本では、伝統と現代文化の両面においてラグジュアリーに対する根本的な再評価が進んでいる。洗練された消費者がマス向けの大量生産品から本物志向や希少価値へとシフトする中、日本の伝統産業はこうした需要に応える絶好の立場にある。投資家にとって、この拡大が見込まれる市場に参入する機会は今なのである。

日本のラグジュアリー復興はトレンドではなく伝統に根ざす

投資家にとって最も魅力的な機会の一つは、日本の伝統的なラグジュアリーのエコシステムに存在している。何百年も受け継がれてきた工芸品や工房は、長らく日本の精密な美意識を定義してきたが、この分野は数十年にわたり苦境に立たされてきた。

国内の生活様式が近代化し大量生産品が主流となるにつれ、手工芸品への需要は 急減し、市場規模は1990年の5000億円から現在では約1000億円にまで縮小している。しかし長年の衰退を経て、これらの工芸品は今、海外の消費者、コレクター、訪日外国人によって再び注目を集めている。彼らはその芸術性と希少性を究極のラグジュアリーと見なしているのだ。江戸切子、手織りの着物などの伝統工芸が新たな顧客層を獲得している。この需要の復活がもたらす機会を投資家は見過ごすべきではない。

状況の変化は既に日本国外で見られている。備前焼がミラノデザインウィークに出展され、長船(おさふね)の刀工は欧州でコレクターを獲得し、輪島漆器はニューヨークのギャラリーで称賛を集めた。ファッションでは伝統的な織物が再解釈され、足袋型の履物は現代ブランドの象徴的なデザインとなっている。

飲食でも、フランスのラグジュアリー・コングロマリットと日本酒ブランドの提携など、日本の感性が現代のラグジュアリーに文化的深みをもたらす事例が見られる。日本の茶道にルーツを持つ抹茶を例にとろう。世界的な需要増と供給の課題が相まって、2025年には価格が30~75%上昇した。 現代ブランドもこの勢いを捉え、日本の時計大手はグローバルな舞台で存在感を示し 、ニューヨークなどの主要都市に旗艦店をオープンしている。こうした事例は、日本の職人技が博物館に展示される遺物ではないことを明らかにしている。それは今も息づき、国境をはるかに超えて人々の嗜好を形成しているのだ。

本物を求める世界市場が日本を再発見している

この再評価が進む現在、世界のラグジュアリー市場は勢いを失っている。主要ラグジュアリーグループの売上は軟調で、 フランスのコングロマリットLVMHは2025年第1四半期に2%の減収、上半期で4%の減収を報告した。 マス・ラグジュアリー市場への拡大が長年続いたことでブランドの特別感が薄まり、多くのブランドが所有よりも体験を重視する若い世代との接点を失っている。Z世代にとって、ラグジュアリーは意義があり倫理性を感じさせるものでなければならない。ロゴのためだけに大金をはたくつもりはないのだ。

日本はこの変化に対応する好位置にある。日本の手仕事によるラグジュアリー分野は、世界中の消費者が最も渇望するもの、すなわちマーケティングではなく文化と本質に根ざしたストーリーを提供している。金継ぎなどの過小評価されている工芸や伝統的な酒造りが、抹茶に続くブームを巻き起こす可能性がある。伝統工芸家と現代ファッションブランドの最近のコラボレーションは、日本の職人技が自らの本質を保ちつつ、世界のトップラグジュアリーブランドと肩を並べ得ることを示している。 京都の「細尾」の織物はハイファッションやインテリアデザインに登場し、工芸工房はグローバルなメゾンと提携している。  

とはいえ、規模拡大への道は摩擦なくして進まない。多くの老舗は創業家主導の体制、限られた後継者計画、熟練した弟子の不足といった制約を依然受けている。  また、グローバルな消費者を惹きつけるために必要なデジタル技術やブランディング能力を欠いているケースもある。投資がなければ、これらの工芸は世界に再発見されるのと同時に衰退していくリスクがある。これこそが、外部資本が今求められている理由だ。

日本のラグジュアリーへの投資はビジネスチャンスであり文化的コミットメントでもある

資本、国際的なネットワーク、運営ノウハウといった適切な支援があれば、日本の手仕事は独自性を支える伝統を守りつつ持続的に成長できる。投資家にとっては、失われかねない文化的遺産を保護しながら永続的な商業的価値を創出する機会となる。  

最近まで、日本の民間投資の大半はテクノロジーと産業分野に集中してきた 。S&Pのデータによると、過去数十年間のテクノロジー関連分野への外資系M&A投資総額は1.7兆円に達し、耐久消費財分野への投資額4,190億円の4倍に上る。しかし変化の兆しが見え始めている。 アジア系投資会社MBKパートナーズとファウンテンベストによる日本を代表する高級宝飾ブランドTASAKIの買収は、既に同ブランドのグローバル展開を大きく加速させている。最も有望な機会は、深いルーツを持ちながら本質を損なわずに拡大できるブランドにある。西陣織をはじめとする絹織物から現代的な着物デザインまで、テキスタイルは幅広い分野で魅力を発揮する一方、金属工芸や陶磁器は芸術と日常生活を結びつける架け橋となる。  

しかし、ポテンシャルが明確になってきた一方で、今後の道筋には慎重かつ緻密な対応が求められる。日本におけるビジネスのペースは比較的遅いことが多く、海外投資家には忍耐と文化的配慮が求められる。創業者は支配権を手放すことに躊躇し、急速な変化よりも信頼できる少数株主と組むことを好む傾向がある。若い世代が異なるキャリアを選択する中、多くの工房は後継者問題にも直面している。また小規模事業ゆえに統合や協業なしでの成長は困難だ。

しかし適応する意思のある者にとって、これは文化的かつ商業的な機会である。日本の伝統的なラグジュアリー産業への投資は、希少で急速に失われつつある資源と、その何世紀にもわたる職人技と洗練性への出資機会だ。早期に動く者はこの遺産を保存するだけでなく、その世界的な復活、そして世界に再び紹介される日本独自の美意識に出資することとなるのである。