// . //  知見/レポート //  日本に求める、 誰ひとり取り残さない 気候変動対策

(2021年10月発行)

国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を目前に世界はまちがいなく、脱炭素をベースとした 気候変動対策を加速させる方向に動いている。経済界でも、欧州を筆頭に世界各国で、気候変動が経営 にもたらす影響について、企業による情報開示が進んでいる。

この背景には、2015年にG20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請を受け金融安定理事会(FSB)のもとに設置された国際機関、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などのような、気候変動がもたらすリスクや機会の財務的影響を開示する基準を検討し、発信する枠組みが整いつつある状況がある。さらに、企業の経営方針を定める場である取締役会において、気候変動対策が議題として取り上げられる ようになった。これは要するに、気候変動問題が企業の存続を大きく左右するテーマとして扱われるよう になりつつあることを示している。

このように前進は見られるものの、各国が掲げた2050年の長期的温室効果ガス削減目標、2030年の中 期的目標から逆算すると現時点ですでに遅れが見られるという分析結果も出ている。また、当社が世界 経済フォーラム(WEF)と共同で作成した報告書の中では、脱炭素社会へのトランジションを支えるため に必要な資金規模は莫大で、不足している状態が続いていることが指摘されており、これについては各 国政府や金融機関などとも足並みを揃えた対策が必要となる。